東日本大震災の教訓

前回に続いて東日本大震災についてです。

 

津波の被害と恐怖

東日本大震災では、地震後の津波により

岩手県宮城県福島県の沿岸部ではかつて経験したことのない

非常に大きな被害となりました。

実際にあの津波を目のあたりにした方々にとっては、

黒いかたまりとなった水が襲ってくる恐怖、

今まで住んでいた家や街が破壊されていく悲しさ、

そして親族や親しい方々を亡くした無念の思いは、

経験していない私達の想像を絶するものでしょう。

 

◇自然の驚異

高さ10mを超える津波は、防波堤を乗り越えて、

船や自動車、橋や建物などのあらゆる物を押し流し、

また川を上り、海岸から数km離れたところまで押し寄せました。

時に自然の力は強大で、全く容赦しない、

その驚異をまざまざと見せつけました。

 

◇震災からの復興

震災からの復興事業として、防潮堤、市街地の嵩上げや高台への集団移転など、

多くの大掛かりな計画が策定され実施されてきました。

10年が過ぎ、これらの復興事業はほぼ完了しつつある状況です。

嵩上げや高台移転した街並みは整備され、真新しく生まれ変わりました。

三陸自動車道常磐自動車道東北自動車道から各地への接続道路も整備され、

仙台や盛岡などの内陸部と沿岸部のアクセスが大きく時間短縮され、

交通の利便性は以前より格段に向上しました。

 

◇震災の教訓

この震災のように、二度と同じ犠牲を出してはいけない。

暮らしを取り戻し、築いたものを守る、その思いを考えれば

復興工事のように自然に対抗するかのように対策することも

当然とも思います。

しかし、一方で本当にそうなのだろうか、と思うこともあります。

この震災で私たちが「本当に学び得たことは何なのか」、

10年を経た今、

考えてみることは意義があるのではないかと考えます。

 

災害の教訓は

「自然は人間が考える以上にはるかに強大であり、人間は自然に対して無知である」

ということと思います。

 

人間が物を作り出す際には、自らの経験を基にして、

科学的、技術的な分析をして根拠を見出し、

そして設計し、計画し、実行します。

言い換えれば、経験から想定した範囲内で物事を考えていることになります。

とても自然なことであり、非常に大切なことです。

一方で、私たち人間の経験、特に自然に対する経験とは

如何ばかりでしょうか。

地震津波は地球の地質などに起因する気象的な現象です。

地球の地質は地球誕生以来の歴史のものであり、

約40数億年という途方もない時間を掛けた歴史です。

私たちが現代的な方法で調査、記録として得られる経験は、

昭和以降のたかだか100年程度です。

私たちは自然に対しては無知であり、経験が少ないと知り、

謙虚に向き合うことこそが必要なことと思います。

 

◇おわりに

私たちは、常に前を向き進んでいかなければなりません。

気象や地質を知る努力を続けるとともに、

科学や技術を応用して役立てていくことは必要です。

ただし、自然を知りつくし、予測や制御ができる、という誤認をしないよう

常に注意していかなければならないのでしょう。